今朝京都の街を歩いてて、三条通を東から鴨川の方へ。そうだこの辺に大将軍神社があったな。9月の台風で拝殿が倒れてしまったというニュースを聞いたが、どうなっているんだろう。そう思って、立ち寄ってみた。結構無惨でした。敷地中央に建っていたはずの拝殿が跡形もなくなっていて、大銀杏も枝がほぼすべて切り取られていた。あの枝もほとんどが折れたのだろう。そのままでは危なくて、仕方なく、そのような処置になったのだろう。大将軍神社の大銀杏はここの名物だったし、それがあれでは、もう何年も何十年も、名物とは呼べる状況にもどることはなさそうだった。

　境内の一角で、新しい木の色をした屋根があった。屋根の上には2人の職人さんが載っていて、工事をしていた。ギュルルルルルルルという音が響く。電動ドリルの音だ。んん？ ああいう神社建築って金属の木ネジを使うものなのか？専門的なことはよくわからない。だが、式年遷宮なんかの本気の神社建築で金属ネジはないだろう。金属ネジを電動ドリルでなんてことはないだろう。杮葺きや桧皮葺きの屋根を竹釘で打ち付けていく。その材料を集めるのも大変だし、職人だって少ないだろう。だからそれは本来的な作業ではないんじゃないかと思う。だが、そうやって電気ドリルで金属の木ネジで急ピッチで作業している姿を、僕は肯定的に受け入れる。

　その屋根は祠の屋根で、神様が祀られている。拝殿は神様がいる場所ではないので、たとえ大きくて敷地の中央にあるとしても後回しでいい。だが本殿とは別にある祠には神様がいるわけで、そこにお参りをする氏子も少なからずいるわけで。その祠はなんとしてもいち早く建て直す。そういう意志を強く感じる。寒くなりつつある11月初旬、新年を迎える前に完成させなければ、初詣に行けなくなる氏子も出てくるだろうから、なんとしても急いで建て直す。そういうことなんだろうし、それはそれで大切だし、やむを得ないことだと思う。

　「そんな建て方でいいのか」「神様の屋根に金属ネジって」みたいな意見もあるだろう。それはそれであって良いと思う。だが、それを言い出したらその祠が建て直されるのはいつになるのだろう。祠が建て直されるのがいつになっても構わないから、正式な建て方が出来るようになるまで努力するのが大事だといわれると、その意見は一体なんのために存在するのかと首を傾げたくなってしまう。将来の氏子が正式な建物でお参りできるようにするために、今現在の氏子は犠牲になってただ待ち続けろということになる。それはどうなのか。

　なぜこんなことを書いているのかというと、立憲民主党の枝野氏がまた変なことを言っていたというニュースをみたからだ。

【立憲民主・枝野代表、統一名簿は「訳がわからない」】

　詳しくは上記のリンク先の記事（Yahoo!ニュース）を見てもらえばいいのだが、クリックしたくないという人もいるだろうし、記事ページが永遠に存在するとも思えないので簡単に要約を。来年行なわれる参院選で呼びかけられている野党の統一名簿に対して枝野代表が否定的な発言をしたということ。

　「違いを、目をつぶって１つの大きな塊になってしまったら、どこからも支持してもらえなくなる。ましてや比例名簿を１つにするなんて訳がわからない」（立憲民主党 枝野幸男代表）

　小選挙区制である以上、選挙区での闘いでは1人しか勝つことができない。だから選挙区の候補者調整はやるという。では比例区の統一名簿はどうするのかというと、それはやらないという。比例区の仕組みを考えたら、ひとつのまとまりになった方が死に票が少なくなるので圧倒的に有利になる。有利になるということは、非自民の議席が増えるということだ。だがそのためには自分たちが比例区で何人くらい当選させるべきかということを予め上限も下限も決めていくということになるわけで、おそらくそれが嫌なんじゃないだろうか。小選挙区で野党がぶつかりあったら自民に勝てるはずもなく、だから本当に犬死にになる。だからそれは選挙協力をする。だが比例区で統一名簿にせずにガチンコで野党がぶつかれば、それによって野党の中でどこが一番支持をされているのかが明確にわかるし、それが野党間で主導権を持つかどうかの拠り所になっていく。野党同士の争いには有利になっていくのである。その野党同士の主導権争いのために野党の死に票を増やして、自民に有利に働く方向に向かうというのであれば、それは正しい闘い方ではあるまい。

　それだったら、小選挙区でも選挙協力などしなければいいのに。小選挙区での候補者調整に応じるということは、立憲民主党の支持者なのに自分の選挙区で投票できる候補がいないという状況を作ることである。それが立憲民主党の支持者のためになることなのかというと、そうではない。だが、すべての選挙区に立憲民主党の候補を立てるとどうなるのかというと、すべての選挙区の立憲支持者に1票を投じる候補を作ることになっても、その票は落選に向かう票にしかなりませんよと逆に突き放すことになってしまうのだ。すべての選挙区に投票できる候補を立てることがすべての選挙区の有権者の期待を奪うという皮肉な結果に陥る。だから、小選挙区での候補者調整が有権者の利益にも結果的にはなっていくのである。

　話を比例区に戻すと、「筋を通したい」という枝野幸男の主張は、一見正論を言っているように見えるかもしれないが、それは結局台風被害を受けた社殿を時間がかかっても正しい方法で建築すべきというようなものと近いのだと思う。だがそれによって向こう数十年の氏子の参拝先を失わせるという決断は、独り善がりなものでしかないのではないかと強く思う。

　アメリカの中間選挙のニュースを見ていると、共和党の候補が「我が家はトランプを支持していて、幼児に積み木で壁を作らせたり、トランプ応援のメッセージボードで言葉を教えている」という女性候補が紹介されていた。バカじゃなかろうか。と思うが、そのバカっぽいものをなぜか支持する層が30数%ほど存在するという。そしてそれを嫌悪する層が30数%、投票に行かない無関心層が30数%。だから彼らは一部からバカと思われるその主張をするのだ。日本でも安倍総理に近い人たちの行動や主張を見ていれば同じようなケースがたくさん見て取れる。

　枝野幸男のその主張も、一見正論に見えるようでいて、そういう確信的なものなのではないのだろうか。