新人発掘について

キラキラレコードで新人発掘をし続けて23年。いろいろやってきたけど本当に難しい。アーチストがこちらに求めるものと、レーベルがアーチストに求めるものがなかなか一致しないというのが大きな理由だ。
アーチストは主に二つのことを求める。ひとつは流通であり、もうひとつは宣伝である。
流通とは、第一にはタワレコやamazonで売られるという状況を作ることで、次には店頭で必ず置かれる状況にすることで、さらには実際に枚数が売れることである。
いずれの場合も、基本的には現状の自分の状況以上の状態を求めてくる。それもすぐに。レーベルが関われば何かの魔法を使ってシンデレラにしてくれると思われているのだろうか。楽ができると思っているのだろうか。でも音楽性をいじられたくはない。自分たちの世界観には関わって欲しくない。自分たちが決めた願望的計画を実現するためにレーベルが魔法をかけてくれると思っている。
だがそううまい話はないよ。
レーベルとしては、まず第一にこちらの話をきちんと理解してくれるアーチストを望む。次に、無条件に頷くのではなくちゃんと納得した上で自分の意見を出せるアーチストを望む。さらには本当に実現したいことを明確に持ち、その実現のために何をやればいいのかを真剣に探し、解が見つかればきちんとコツコツやり遂げる根性を持ったアーチストを望む。だがそこまで出来ていたらある程度の成功は既にしているだろう。それがないからどうしていいのかわからずに、行き当たりばったりの活動をひたすら繰り返すことしか出来ずにいるのだ。
話は途中だった。宣伝の話だ。アーチストが求める宣伝とは、テレビに出たい、雑誌に載りたい、フェスに出たいというものだ。そういう機会さえあれば多くの人に知ってもらえて人気も急上昇するだろう、と。
流通もそうだが、宣伝もそうだ。多くの人の目に耳に届けたいわけだが、じゃあ届けてくれる立場の人、ショップの人やメディアの人イベンターの人の気持ちはどうなのだろうか?お店に並べてどのくらい売れるのか、テレビに出せば視聴率は伸びるのか。出演させれば動員が期待できるのか。それを追求される立場の人が何を扱いたいのか、取り上げたいのか、出演させたいのか。そのことを考え、まずは扱いたいと思ってもらえる状況を作るべきだ。ショップに置かれたくないとか、メディアに取り上げてもらいたくないとか、フェスに出たくないのならそんなこと考えなくていい。でもやってもらいたいのなら考えるべきだ。
そのために今何をすべきなのか。それを一緒に考えるのがレーベルの大きな仕事だと思っている。遠回りのようで一番確実な努力の道。それを理解できる才能がある人を、新人として発掘したい。今はまだ理解していなくても、だから道に迷っていても、それは構わない。むしろそういうアーチストほど、道しるべ役を求めているはずで、だからキラキラとの出会いが役立つのだと確信している。
それはいい先生との出会いを求める学生のようなものかもしれない。意欲はあっても理解力に欠ければ良い教えを身につけられず成績も上がらない。有名予備校に入りさえすれば志望校に合格出来ると思えばそれは勘違いに過ぎず結果はおぼつかない。小さな個人塾であっても、学生に理解力と熱意があればそれに応じた学力は身に付く。もちろん個人塾の先生全てがいい先生とは限らないわけだが。まあどの先生がいい先生なのかを見抜く才能も学生には問われるのだろう。
出でよ、本気のアーチストよ。目的意識を持ち、そのための努力をきちんとすれば、成果は必ずついてくる。僕はその出会いを心の底から待っている。