会釈

 近所を歩いていて、見た顔の人が前から歩いてくるのに気づいた。その間隔は徐々に近づいていく。相手も僕に気づいた様子。同じマンションの人だ。会釈する。

 朝は朝で外出する時、エレベーターが1階に着くとそこには同じ階の住人が立っていた。会釈する。向こうは僕の連れている息子にとびきりの笑顔で行ってらっしゃいと声をかける。

 そういう時、越してきたこの街の、僕も住人になれたのかなあという気がする。いや、個人的な付き合いは特にない。マンションの廊下で顔を合わせれば会釈する程度の間柄でしかない。でも、その会釈する程度の関係が、僕をこの街の住人なんだと確信させてくれる。

 もっと沢山の人と知り合いたいとか、より深い交流をしたいなどとは思っていない。先方から望まれれば固辞するつもりもないけど、その程度の関係を今の程度持てたことが、この7年ほどの僕の暮らしの証なのかなあという気がする。

 まあ、僕が日常的に息子の手をつないで歩いてるから、相手も関心を持ってくれるというのは解ってるつもりですけど。