今朝ほどにfacebookで友人とやりとり。やりとりといってもある記事についてのコメントを書き込んだだけのことだが、まあひとつのやりとりであることには変わりないだろう。

　その記事は「どうして正社員として高年収が無ければ結婚できないの？」というタイトルで、友人は女性は妊娠や出産があるためプロジェクトから長期離脱せざるを得ず、長期プロジェクトにアサインさせることができないと述べていた。多分その通りなのだろう。現実とは残酷なものなのだろう。コンサルタントを生業としている彼は、他社との競争に勝ち抜くための現実的なアドバイスが求められるのであって、だから少しでも現実的かつ効率的な戦略を考えるのが仕事であり、そういう結論に至るのもやむを得ない。

　だが、それでは人は能力によってどんどん排除されていく。結果として一部の勝ち組とその他大勢の負け組という超格差社会が生まれてしまうのは必然。しかも均等な能力からスタートした後の努力の差によって生まれた能力差なのであればまだしも、男女の肉体的な違いを基に特定の職から排除するということが当たり前になるのであれば、身体障害者もまた当然の様に排除の対象になっていく。そもそも均等な能力からせーのでスタートすることなど可能なのかねという視点からすれば、世の中の誰もがいつ排除されてもおかしくないということになってしまう。

　これを一企業の特定プロジェクトでの話で終わらせられれば良いのだろうが、どんなプロジェクトも社会の中で存在する以上、プロジェクト外のすべての社会とも密接に関わっている。つまり、本当の排除などはできないのだ。プロジェクトに適さない人も、どこぞでは生きていかなければならない。排除排除の果てに社会は崩壊する。その他大勢の不適な人も、生きなければならぬのだ。

　社会である以上、その不適な人が生きていくためのシステムを構築する必要がある。税を課して富の再分配を行なうということも、富を持つ側の人間からすれば理不尽な徴発となるだろうが、そうしていかなければ社会は簡単にスラム化するし、スラム化した街で生きていくことは富を持つ人間にとっても不都合なはず。女性を妊娠出産育児の故にプロジェクトから排除するというのであれば、その説に依る人は結婚などをしてはいかんのだろうし、仮に結婚したとしても100%の生活費を不足なく提供しなければいかんのだろうし、その人の仕事は少子化によるマーケットの縮小などを憂いてはいかんのだろう。そう、それは不可能なことなのだ。

　だとすれば、妊娠出産育児をすることは社会としてどう受入れていくのかということをきちんと担保していく社会が築かれていかなければならないということになっていくし、どんなプロジェクトも長期離脱する可能性のある人を交えながらも機能していくような仕組みを作らなければ立ち行かないということになるのだと思う。

　また別の友人がTwitterでこんなことを言っていた。世の中は大人の小さなズルの積み重ねで出来ていると。高価な自転車に乗っている大人が赤信号を無視して進む。自分だけはいいだろう。車も来てないからいいだろう。急いでるんだからいいだろう。その小さなズルがどんどん積み重なっていって、モラルは崩壊するのだと。

　僕もその意見に賛成だ。2歳の息子を自転車に乗せて保育園を往復する毎日。赤信号は必ず停まる。自分自身がこれまでどんな信号での振る舞いをしていたのか反省させられる。だが、どういう状況なら赤信号を渡っていいのかの判断もつかない息子にはとにかく赤信号は停まれというしか無いわけで、でも考えてみたら「こういう時は赤信号でも無視して良いぞ」なんてのは、安全かどうかという以前の問題として、倫理をどうやって教えるべきなのかという観点からしても本末転倒のような気がする。怪我はしなくても、そして無視した方が自分の小さな得になったとしても、巡り巡って必ず自分の首を絞める。最近は特にそう思う。経済が大切なのはよくわかる。だがすべての倫理観を投げうってまで必要なものなのかというと、たかが金じゃないかとしか思えない。金ごときに倫理を投げうって、それは人間なのか。残飯に群がる畜生と何が違うのだ。

　Wカップサッカーが先日終了して、激しいぶつかり合いもたくさんあった。ネイマールが骨折してしまったのは悲しい出来事だが、骨折に至る接触をした選手が追放されたりなどはしていない。怪我は残念だったが、お互いルールに基づいて激しく当たっただけのこと。しかし相手チームの選手に噛み付いたスアレス選手は数ヶ月のサッカー追放処分を受けた。サッカーでエキサイトしてぶつかって、相手選手が倒れたら手を差し伸べて起こそうとする。そういう爽やかなシーンも随所に見られたし、それがスポーツを成立させる、ルール以前のスポーツマン精神というものだろう。

　だがもし、勝利こそ最優先という考えで、ちょっとだけルールを自分の為に変えようとか、審判を買収して判定を不公平にしてもらおうとか考えるチームがあったらどうだろうか。それはその試合には勝てるかもしれないが、露見すれば確実に追放だろうし、追放にならなければスポーツ全体のファンを失う。結果的に自分を含めたすべてが損をする。噛み付きもそういう類いのなにかだったのだろう。噛み付きが許されるとなれば、フィールドは噛み付き大会になってしまう。そんなのはサッカーではないし、スポーツではない。子供たちに夢など到底与えることは出来ない。

　そんな感じである。自分が自分ひとりで生きているわけも無く、だから周囲の人たちと一緒に生きていける術を模索し、そのために必要な協力はすべきだと思う。もちろんそれがいかがわしい「絆」などというスローガンになってしまい、手足を縛ろうとする流れには断固抵抗しなきゃならんが、社会からの強制ではなく、自分自身に課すモラルだったり美意識という問題なのだろうなということもよく思う。そこを勘違いすると木偶人形に成り下がるだけなのだが、勘違いすることなく、社会が多くの人たちが共存できるような、そんなルールがゆるやかに是認されて常識となっていくような、成熟社会を目指していくにはどうしたらいいのだろうか。