何にでも当てはまることだと思うけれども、レーベルを運営するにも方針やポリシーというものは必要だ。ここではそれをスタンスと呼んで話を進めたい。

　キラキラレコードのスタンスというのは、言葉にするなら「自主独立」と「機会均等」というものだ。

　自主独立とはできるだけアーチストのやりたいことを実現するということ。レーベルとアーチストの関係性というのはなかなか難しく、こちらが対等にと思っていても、アーチストの方で「レーベルに従わなきゃ」という気持ちが生まれてしまうケースが多い。尊重してもらうのはありがたいが、遠慮されたら困る。ミーティングをやって、こちらから不用意に意見を言うと、それを実現しようという気持ちがアーチストに生まれる。こちらの意見がアーチストにとって気付きのサジェスチョンになっていればいいのだが、心底納得していないのに「レーベルが言ってるから逆らわない方が良い」的な気持ちで進んでもらうのは良くない。納得できないプランで動いても効果は低くなるし、なにより成功しなかった時に大きな悔いになる。なのでこちらが何かを言った時に反論できるような関係になるまでは、基本的にアーチストのやりたいことを最優先させるべく、こちらからはあまり口を挟まないというスタンスを取っている。

　機会均等というのは、誰もがリリースする機会があって然るべきというもの。その音楽が価値があるのかどうかということについて、評論家やレーベルの人間が決めるのではなく、アーチスト自身とリスナーが決めるべきという考え方のもと、アーチストは自分たちの音楽に価値があるということを証明するためにも、ライブは満員にすべきだし、CDは売るべきだと思っている。逆にいえばそれが実現しさえすれば誰の批判などにも屈する必要など無いわけで、あるレーベルが「お前の音楽なんてクソだからリリースしないよ」などと言っても「じゃあ別で出しますよ。自分たちで出したってファンはいるし」と言い返せる。だがその状況を作るためにも、ライブできる場所が必要だし、リリースをする機会が必要だ。そのために、レーベルとしてできることは門戸をできるだけ広くしておくということだと考えている。もちろん本当にダメなものはあって、それは本当にダメなのだけれども。

　で、そういうスタンスでやってきてて、満足する部分もあれば、不満な部分も出てくる。一番感じているのは、レーベルの態度に愛がないと思われているのではないかということだ。積極的に関わる愛情表現もあれば、黙って見守る愛情表現もある。いや、別に愛とかいうウェットな言葉で表現するのが正しいのかもよくわからないのだけれども、愛のない関係はやがて冷えて、終わりを迎える。終わりを迎えるだけでなく、そもそも始まらなかったりする。恋愛関係でもそうだが、マメでおせっかいな方が、遠慮深いよりも関係を深めやすい。そういう意味でも、やはりこの数年のレーベルのスタンスにはマイナス面も多かったのではないかという自覚が確かにある。あるのだ。結果的にデモの段階で「コレだ」と思ったアーチストに対しても、他とあまり変わらない距離感で対話していくため、話がまとまらないうちに立ち消えになってしまうことも多かった。それを解消し、「コレだ」と思えるようなアーチストを揃え、そのパワーによってレーベルとしても邁進する力を得たいし、またアーチストたちにとっても、粒がそろった他のアーチストたちとのコラボによって力を増していく機会を得られるのではないかと思ったりしている。

　こう考え始めたのは、現時点でリリースしているアーチストたちが、近年に無いくらいにいい感じになりつつあるという手応えもあるからだ。そういう人たちに対して、もっと積極的に関わっていくことで、彼らの今後の展開についての展望が開けてくるはずだし、キラキラレコードとやって良かったなと感じてもらえる可能性も高まっていくはずだと思うのだ。

　だから、これからはちょっとだけスタンスを変えて、積極的なアプローチを取り入れていければと考えている。その分仕事としては大変にはなるだろうが、やりがいはある。と思う。そのはずだ。まずはいくつかのプランをキッチリと考え、それをアーチストに対して提示していこう。それはある意味レーベルからのラブレターのようなもので、多少気恥ずかしい感じはあるのだが、まあ当たって砕けろだ。そう考えるだけで、今から既にワクワクドキドキし始めている。