デモがすごかったらしい。

　しかしデモってこれまで何か変えてきたことってあったのか？どうにもこうにも疑念が強い。反原発のデモも大規模だった。でも大飯は一度再稼働されたし、再稼働に向けた動きも完全に止まったりしていない。特定秘密保護法の時もデモはあった。が普通に法案成立。そして集団的自衛権。デモは久々に盛上がったようだが、何のことはない、閣議決定は粛々と行なわれるのであった。

　僕も先日バスに乗っていたら河原町三条あたりでデモに遭遇。疲れて不機嫌な2歳の息子を抱きかかえ、一刻も早く自宅に着きたいと思っている僕には、バスの通行を阻む渋滞を生むこともそうだし、せっかく寝てくれそうな息子を起こしてしまうのではないかという鳴りモノの太鼓の音がなんとも困ったなあという存在であった。それでもデモがなんらかの作用を生んで、目的を達成する役割を担うのであれば、息子の不機嫌にも我慢するし、息子にも多少の不機嫌を我慢してもらう。だって集団的自衛権のための憲法解釈変更を阻止するわけなのだから、2歳の多少の不機嫌などなんてことのない恩恵になるはずなので。

　だが、デモが何かを変えるというのは、僕は少々まやかしなのではというように最近は思っている。政治に不満を持つ人のガス抜きにはなるだろうし、そこに参加したということで、思うような未来にならなかった時の免罪符として機能するだろう。だが、そういう効用を与えることで、本当の努力から目を叛けさせているのではないかと思うわけだ。まるで太宰府天満宮や湯島天神にお参りして絵馬を書けば合格するよ的な。いやいや、勉強しなきゃ合格はおぼつかないですよと言いたい。だが、デモに行って声を涸らして叫んだからいいんだという人は結構多い。いや、そういう人を非難しているのではない。本心は「自分に出来ること」という純粋な想いなのだし、それはとても尊いことだ。しかしそういう純粋な想いをデモという器に流し込むことで存在しているなにかというものがあるような気がしてならない。デモの人はデモをやることが自己目的化しているのではないだろうか。旧くからある野党もそこに存在することが自己目的化している。

　与党が野党と拮抗する時、まあ与党というのは数的優位にあるわけで、野党というのが結集して力を合わせなければ勝てるわけもない。だが共産党は常にほぼ全選挙区に候補を立てる。そこで反与党の票が分裂する。共産党の主張が他の野党と相容れないから当然だという考え方は尊重したい。彼らの考え方を支持している人も尊重したい。意に添わぬ論を主張する候補に投票しろというのは大変に苦痛を伴うものだ。だから共産党的考え方を持つ有権者の受け皿として候補者を立てるというのはある意味重要なことだ。だが、結果論としてその動きが野党勢力の結集を阻害してしまう。それでは共産党自身が掲げる理想も実現はしないだろうと思うが、彼らはせっせと与党にアシストパスを蹴り入れ続ける。

　与党の政治がヒドいのであれば、それはなんとか阻止しなければならない。そう思う人が100%であればいいだろうが、利権も絡めば与党支持の人はやはり多く、相当頑張らなければ勝てはしない。なのに共産党が独立した野党として反与党票をまず分断する。ここ数年はその効用を理解した自民党が、似非野党と乱立させているようにも思える。渡辺喜美のみん党も橋下維新もみんな安倍っちのお友達だ。そんな彼らが自民の制作を批判しまくる。結果として自民を嫌いな人たちの票が分断される。自公の票ががっちりとまとまって大量当選。一丁上がりだ。

　話はどんどん逸れていくな。集団的自衛権の話。ん？デモの話だったっけ？まあどちらでもいいや。

　集団的自衛権だけの話ではない。この1年半の安倍政権下で行なわれている政治は、とにかく日本人を痛めつけている。個人から吸い上げて企業に内部留保を蓄えさせる原資にしている。それでも日本人はさほど文句も言わずにやってきた。アベノミクスといいながら、第三の矢がなんなのかいまだによくわからないし、株価以外の何がそんなに潤っているのかという気がするし。僕自身消費税増税に便乗した値上げに苛まれてるし。ああイライラ。

　それが、今度はお金の話だけじゃなくて、血の話になってくる。ロジックはあれ、絆だし、女子供を安全に避難させるとかなんとか。そんなこと言うんだったら女子供のベビーカーを安全に外出させろよと思うのだが、ネット上の議論を見ているといまだにベビーカー迫害の発言をする人も多数。あれはなんの洗脳に遭っているんだろうと本気で思う。ちょっと考えれば自分の言ってることが自己中心的な子どもレベルのロジックだって判るだろうに。洗脳されてるから仕方ないなと結論づけるしか無くなってくる。

　とにかく、デモしてる場合じゃないと思う。デモが盛上がって安倍っちが頭を抱えているというツイートを見たが、その時安倍っちは山田京都府知事らと会食し、ブータンの要人と会ってたとかいうらしい。そして翌日には閣議決定。なんにも堪えてなどいない。

　で、その山田京都府知事の知事選では投票率がなんと34.45%。ほぼ2/3の有権者が投票もせず、山田氏は4選を果たす。これでは政治は変わらない。変わるわけがない。デモに参加している人は、何かを変えたいのであればまず自分はもちろん投票に行き、可能であれば家族や友人知人にも投票を促す努力をした方がいい。そういうことをせずに、ただデモの現場に行って叫んで終わりというのであれば、それは政治の意思表示でもなんでもなく、お祭りに参加したようなもの。Wカップをスポーツバーで観戦するのとさほど違わないように、僕には思えるのだ。