カジノが成長戦略だそうな。そりゃよかったな。さぞやパチンコマネーで成長してきたんだろうなあ、そういっている人たち。

　「いや、パチンコはほぼ韓国だよ」とネトウヨの人は言うだろう。まあその真偽は別としても、仮にパチンコの利益が韓国に流れているのだとしても、日本でカジノを作ったときにノウハウを持っている人間など日本にいないわけで、だからラスベガス資本（？）の世界的カジノ企業がノウハウと資本を持って参入してくる。日本は丸投げするだろう。だったら、結局パチンコと同じになるような気がしてならない。いや、素人の勘でしかないけど。

　で、成長戦略って一体何だとふと思う。成長をするということは、２つの方法論がある。ひとつは、パイの大きさが変わらない状態でシェアを奪い合うということ。もうひとつは、シェアは固定でもパイを大きくすることで成長するということ。

　パイが大きくなるというのは、発見や発明による。資源開発でエネルギーをゲットすれば、それが人々を潤すことになる。もちろん地下資源の開発は後世の人たちからの簒奪という見方もあるが、ここではそれは考えないことにする。今まで世の中に無かったものを得ることで富が生まれるのであれば、それは幸せなことだ。科学の発展がいろいろなものを生み出し、それが産業として発展するとともに人々に恩恵をもたらす。

　だが、パイの大きさが変わらずにシェアを奪い合うというのはどうなのだろうか。これはシェアだけに限らない。富を奪い合うということでもある。貨幣価値の違う途上国に工場を作って人件費格差で利益を生むという場合、先進国で暮らす人の雇用が途上国の人に奪われるということでもある。そしてその奪いによって得られる低賃金労働によって工場主は利益を得る。途上国では物価や生活水準が低いので特に虐げられているという意識は無いが、海外資本による工場が生まれ、仕事が忙しくなるに連れて国の水準も上がっていく。今の中国がそうだ。かつては世界の工場といわれていたものの、現在はその地位はベトナムやミャンマーに奪われている。製造拠点がベトナムに移転すると、それまで中国にあった雇用が奪われることになる。

　ブログであって経済書ではないのでかなりアバウトで進めていくが、今回の「カジノが成長戦略」というのは一体何が成長なのだろうかと首を傾げたくなるのだ。カジノが巨万の富を稼ぐというのは現実としてあると思う。だが、それは結局負ける人の富がカジノに移るということを意味している。で、国民の誰かが負けて失った富を集めてどこかの企業が富を築くのが成長なのだろうか。アジアのカジノでは自国民がカジノに出入りすることを禁じたり制限したりしているそうだが、それは観光の目玉として海外の客に来てもらって遊んでもらうことを念頭に置いているため、自国民が貧しくなるのを防ぐ策だということらしい。これは日本のカジノにも当てはまるのか。当てはまらない場合、それだと日本人のささやかな富が失われて収奪されることを意味している。当てはまらない場合、海外からの観光客が負ける富を収奪するということになる。で、問題は先ほどの「誰が運営するのか」ということなのだが、ノウハウを持っているラスベガスカジノ企業が運営するのであれば、日本の領土の中で「日本人」もしくは「海外からの観光客」が負ける小さな金額を集めた巨万の富が「海外カジノ企業」に集められていくということになるわけで、これはいったいなんの成長なのだか、僕にはまったくわからない。

　それでもそこに拠点を置いて日本法人を設立してもらうということになれば、カジノから上がった利益から税収は確保できるので、国家財政としては成長なのかもしれない。だが法人税をこれから下げていくのであれば、元も子もないということになってしまうのではないのだろうか。まあその前にamazonのように国内での売買に対して税金を払っていない多国籍企業に対する課税をキッチリとしてからの話なんじゃないだろうかと、なんとなく思う。

　武士は食わねど高楊枝のような、仙人が霞を食って暮らすようなことは出来やしないのだから、当然金は必要だ。冬は暖房入れたいし、夏は冷房入れたいのだから。でも、他国から簒奪するようなことや、弱者から簒奪するようなことで「成長だ！」と高らかに宣言されてもどうにもこうにもにっちもさっちもブルドッグなのである。せめて「かすめ取ってすみません」てきなうしろめたさを漂わせながら、「安倍晋三のことは嫌いになっても、日本政府のことは嫌いにならないでください」などと宣言しつつひっそりとやってもらうことは出来ないのだろうか。