息子、4歳5ヶ月になったその日。いつものように絵を描いていた。最近は色々なモチーフを描く。電車やバスの絵は相変わらず多いが、決してそれだけじゃない。

昨夜の絵は、真ん中のモヤモヤした何かから始まった。これはお家だという。うちのマンションかと尋ねると、違うと。これは熊本だと言う。その半分を茶色に塗り、この茶色は煙だと。そこにドクターイエロー新幹線がやってくる。ドクターイエローとは、新幹線のお医者さん。熊本にやってきて治してあげるのだという。他にも新幹線や特急電車もやってくる。黄色の特急は、新幹線じゃない特急のドクターイエローだと。とにかくたくさんの電車のお医者さんが熊本に集まってくる。そして煙を出しているモヤモヤしたお家を治すのだと。

そうしてると上の方にハートを描きだす。ラブなのかと見ていたら、茶色に塗り始める。これはグリコなのだと。グリコのキャラメルはハート型で、これは栄養があって元気が出るものだと固く信じている息子は、それが熊本の空にやってきて、みんなのところに降ってくるのだと主張する。

絵の上手下手はどうでもいい。ハート型のグリコの横に描いた赤い箱に書いたグリコの文字は一部鏡文字になっている。4歳5ヶ月で字が書けるとか、鏡文字になっているとか、そんなこともどうでもいい。彼の心の中で熊本は地震で大変だという認識があり、彼なりに助けてあげたいと思っているのだろう。それを何とかしてあげたいと考えているというのが、なんか素晴らしい。描いてるのを横で見て、泣きそうになった。

ちょっと前に自宅にいるときに地震があって、震度3くらいだったか。東京にいる頃は震度3くらいは日常茶飯事で驚きもしなかったが、京都に移ってからは地震など滅多になく、震度3でたいそう驚いた。しかも小さな子供がいるのだから、僕ら夫婦は息子を寝室に連れて行き、揺れが収まるのを待った。実際は息子を連れていき始めたときにはもう揺れてなかったんだけれども。その時の親の動揺ぶりで、地震とはただならないものだと思ったのかもしれない。その後どこかで地震が起きたとテレビで速報テロップが出ると「あれなんて書いてあるの？」と聞いてくる。時折報じられる熊本地震のその後のニュースなどにも関心があるらしい。

そして昨日の昼に、関西で地震があり、京都でも震度3の揺れを感じた。そのことも関係したのか、昨晩の絵を描いた。優しい子供だなと思った。

子供をどう育てるのかについて、色々な説はあるのだけども、どうも子供を賢く育てたいという傾向は世の中で強いようだ。そりゃあ賢くないよりは賢い方がいいだろう。だが、勉強的なことを効率的にできるのが賢いのかというとそうじゃないように思う。そして賢いというのがどういうことを指すのかはともかく、僕は賢く育つことより、優しく育つことの方が何倍も大事なことだと思っている。そういう視点で、順調に育ってくれててありがたい。たいして何もしていないので、優しく育てたぞではなく、育ってくれたよいつの間にか、でしかないのだけれども。