都議会でのヤジについて炎上している。誰が言ったのか、何を言ったのか、言ったなら出てこい、いや出てこない、俺たちはかばうぜ、いいや許さない。

　夕方にはある人のブログが炎上した。いや、その人のブログ内のコメントで炎上したのかどうかは知らないが、Twitterでとにかく「アホだ」「許せない」「この程度でブログ書くな」と批判ツイートの嵐。慌てたのかそのブログは削除されたそうだが、炎上するようなブログは必ず魚拓がとられる。頼まれもしないのに魚拓をとりましたと拡散されるから、削除してももはや意味がない。

　で、今回の件はなんかいろいろなことがゴッチャになってて、炎上が炎上を生んで面白いというか情けないというか。

　まず確認しておきたいのだが、自民党都議によるとされているヤジは、品がなかった。そして保育所が圧倒的に不足している東京都の政治を預かる者としては認識不足を指摘されて余りある内容だったし、多くの人が指摘しているように、セクハラであり、差別的な本音が垣間見えていた。なのでかばいだてするに値しないし、かばおうとすると自分も同じ穴の狢と思われるだけなので、自民党都議団は泣いて馬謖を斬るでいいから、早急にその都議をハッキリさせ、自分から謝罪なり辞職なりさせた方がいいと思う。それがもっとも組織を守る術だし、かばいだてしてると傷はどんどん深くなるだろう。いや、僕は自民の味方をする気も全く無いのだけれど。

　で、その自民都議のヤジ発言者のことをかばうつもりだって一切無いし、炎上したブログにあったような、女性都議の過去を取り上げてどうこうというつもりもない。この都議の人格がどうこうというのはまったく関係ないポイントである。それとは別に、ひとつだけどうにも納得できないことがあったのだ。

　それは、涙についての意見である。

　女性都議は議場で泣いたそうだ。泣くのは別にいい。誰が泣こうと、それはそれ。感情というものが表に出てくることはある。政治家の涙として思い出されるのは海江田万里の涙だろう。あれは何のときだったのか。今調べてみたら2011年7月29日の衆院経済産業委員会でのことだったようだ。自民の議員からの質問に思わず涙ぐんだわけで、当時はその涙に対して「男が泣くなんて」「泣くような人に大臣は任せられない」などとかなりのバッシングが起きた。

　しかし今回のヤジに関するツイートでは「女を泣かすとは何事」的なツイートが、全部ではないが結構な割合で見られた。それがどうしても納得できないのだ。

　「女を泣かすとは何事」という言葉の裏には、微妙に差別意識があるように感じる。男が泣くと「男が泣くとは何事」と言い、女が泣くと「女を泣かすとは何事」と言う。これがとても不思議。政治家が泣くのに男も女もあるまい。男が泣くのはダメで女が泣くのは泣かすヤツが悪いというのは、やはりそこに差別的な何かがあるのだと思う。だから海江田のときに「泣くな」と言った人は、今回の女性都議が泣いたときにも「泣くな」と言うべきで、そうでなければ海江田にも女性都議にも「泣かせたヤツは誰だ、責任を取れ」と言うべきなのではないだろうか。

　「差別許すまじ」という人がその論に勢いをつけるために差別的な意識を露呈していたのでは意味がない。と、僕は思うのだ。だから言うならせめて「人を泣かせるとはけしからん」という表現にすべきだ。それでは説得力が無くなるといわれればその通りだろうとは思う。だが、だからこそ「泣いたかどうか」ということを今回の件についての攻撃材料にしてはならないのだ。男であれ女であれ、感情が溢れることは時々あること。だから「泣くとはけしからん」というのも「泣かせるなんて何事」というのも言わず、まるで議場で「くしゃみをした」というのと同列に理解して無視すればいい。そうすることでヤジ都議を攻撃する材料はひとつ無くなるだろうが、それ故にヤジ都議の「何が問題なのか」ということがより見えてくるだろう。涙は、女性の武器でも男性の恥でもない。ヤジが内包する問題はそこにはない。涙に関する事象を除外することで、本当の問題を明確にしていく。それが建設的な議論の第一歩のような気がしている。