この数年、左翼といわれることも多くなった。だが、断っておくが僕は左翼ではない。

　じゃあ右翼？それも違う。断っておくが僕は右翼でもない。

　社会について考えると、いろいろと不満が起きてくる。その不満は、現状と理想が合致していないということに由来するのだが、じゃあ理想というものがあって、それは右なのか左なのかということがなければ成立しない。で、僕はというと、おそらく、若干右寄りの中道ということになろう。当然、その理想の根底には自由や民主主義というものが担保されていなければならないとも思っている。

　だからかつて小泉自民党の頃に規制緩和が進められたとき、僕はそれを支持した。当時は規制が強く、たくさん頑張った人が稼いでも税金で取られる割合が高かったと記憶している。すべては自由にした方がいい。そういう思いで、僕はそれを支持していた。その支持はどちらかというと右寄りの主張という感じに映ったかもしれない。

　しかし今、その規制緩和が変な方向に向かってしまい、非正規雇用などという存在を一定層生み出してしまった。そのことで格差が広がった。格差は均等に広がるならまだしも、既に正規雇用が多い世代を切るわけにも行かず、結局若者層に非正規の山を生み出して、世代間格差という歪みを作ってしまった。

　間違ってはいけないのだが、だから規制緩和がNGということではない。規制緩和できった舵を、行き過ぎたならまた舵取りをやれば良いだけのこと。それは車の運転にも似ている。道の左側に寄り過ぎたなと思ったら右側にハンドルをきって中央車線に戻れば良い。逆も同じ。右側に寄り過ぎたら、左にハンドルをきるだけのこと。そうして事故を防ぐ。運転というのはそういうものだ。社会の舵取りも同じことではないか。

　もしもハンドル右翼という人が運転したらどうだろう。常にハンドルは右にきる。対向車線に突っ込んで大事故だ。ではハンドル左翼がいたら？常にハンドルは左にきる。歩道に乗り上げてこれまた大事故だ。そういう人は、今自分の車が道路のどの辺を走っているのかという認識が出来ない人だろう。だから大事なのは、今の自分がどこにあるのか、どういう状態なのかを見極め、事故が起こらずに済むように適切にハンドルをきっていく。社会も同じ。現状がどうなのかを見極めて、適切な対処、政策はどういうものかを考えて実行していく。政治家なら政策を出し、市民なら政権の応援や批判をしたり、投票行動で影響力を行使すればいい。それだけのことだ。

　政治で右翼や左翼といわれているような人たちというのは、現状がどうなのかとそこにむけた変化のベクトルいうことではなく、現状に関係ない固定的なベクトルというものを信じているのだろう。だからそのベクトルを突き詰めたら破滅に向かうということなど考慮せず、行動や努力の方向がどちらかということだけを教条的（凶状的？）に奉る。それは、「原理主義」というものだ。原理主義はいつも社会をおかしくさせる。なぜか？それは特定の考えや存在以外は認めないからだ。したがって他者を排除することも厭わない。それがテロにつながるし、ホロコーストにつながる。多くの人がそれぞれの考えを持つという自由を有しているのに、それを認めない。狭い理想の天国は、その他大勢の地獄を生むのだ。

　僕のことを「左翼的」といったり「右翼的」といったりする人は、その時々の僕の発言を見聞きしてそういっているのだろうと思う。当然僕の過去の発言をすべてチェックした上で物申すべきということはなく、いろいろな人が瞬発的に何か言ってくれてもなんの問題もない（そもそも僕自身が過去の自分の発言をいちいち覚えてたりしないしw）。なので、今回こういうことをあらためて書いたりしてみた。「お前昔こういうこと言ってただろう」と指摘する人もたまにいるけれど、それは「お前、むかしハンドルを右にきってただろう」と言っているに等しい。運転する以上ハンドルは右にもきるし左にもきる。当たり前のことだ。